さくらの花が舞う頃に
後夜祭でさくらに告られたときは、ほんとに嬉しかった。
てか、一緒に花火見ようって言われた時点でほんとは舞い上がりそうだったけど。
結衣との約束なんか全部破って、本気でさくらと付き合おうかと思った。
だけど、結局そのときも抑えた。
バレたらさくらは大学にいけなくなる。
北丘大学に合格するために、さくらが人知れず頑張っていたことを知っていたから。
だから、さくらのために嘘をつきまくった。
「飽きた」とか「興味ない」とか、思ってもないこと言っちゃったし。
あのときのさくらの顔をたぶん俺はずっと忘れないだろう。
泣き出しそうなのに一切涙は出ていない、そんな表現がぴったりの顔。
俺が見たかったのはあのときのような優しい笑顔なのに、それと全く正反対の顔をさせてしまった。
さくらが教室を走り去っていったあと、一筋だけ涙が出たのは俺だけの秘密。