さくらの花が舞う頃に




「!!!」



あまりの驚きに言葉が出ない。



結衣はなおも震える声で続けた。



「どうして…………どうして、私じゃダメなの?

………なんで、大橋さんのためにそんな悲しそうな顔するの……?

時間の無駄とか言ってたけど……… ほんとはまだ好きなんでしょ?

少しでいい…………、一瞬だけでいいから、私のことだけ見てよ………」




「………結衣」



俺に抱きつきながらそう言う結衣は、俺の知ってる結衣じゃなかった。



俺の知ってる結衣は、余計なことばかり喋って、目的のためなら手段を選ばないやつ。



でも、目の前にいる結衣は、そんな雰囲気を微塵も感じさせなかった。



本気で恋してるのは俺だけじゃない。



結衣だって本気だということを、このとき初めて実感した。




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