さくらの花が舞う頃に
「………寒っ」
しばらく傘もささずに銀世界に浸っていると、私の真後ろからいきなり声が聞こえてきた。
思わず後ろを振り向くと、そこには雪なんか見てる余裕ない、といった様子の吉澤先生。
両手で腕を軽く抑えていて、その手は小さく震えている。
寒がり…………なのかな。
雪を見て喜ぶみんなとは対照的に、思いっきり顔しかめてるからきっとそうなんだろう。
そんな先生の様子を見ているうちに、私はポケットに入れていたカイロの存在を思い出した。
学校を出発したときから入れているから、たぶんすごく温かくなってるはず。
先生こんなに寒そうだし……… カイロくらいあげてもいいよね……?