さくらの花が舞う頃に




…………って心では思ってるのに、なかなか行動にうつせない。



私、いつからこんなにうじうじした性格になっちゃったんだろう。



ただカイロあげるだけなのに。それ以上のことは何もないのに。



目の前の先生は、未だに寒そうに腕をさすっている。



ただカイロあげるだけ。恋愛感情とかは関係ない。ただの親切心。



その考えにたどり着いてやっと決心した私は、ポケットの中のカイロを取り出した。



「先生、あの」



「裕翔めっちゃ寒そうじゃん。大丈夫?」



意を決して話しかけた。だけど。



私の声は、吉澤先生の横から顔を出した水川先生の声によってかき消されてしまった。




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