さくらの花が舞う頃に
「まじで寒い」
水川先生の問いかけに、吉澤先生がしかめっ面で答える。
「裕翔って昔から寒がりだもんね〜」
「悪いかよ」
やっぱり寒がりだったんだ………
水川先生の言葉を聞いて、どうでもいいことを納得する私。
「しょうがないな〜。寒がりの誰かさんのためにあげる、これ」
水川先生がそう言って吉澤先生に手渡したものは、見覚えのある長方形の物体。
私の手の中にあるものと同じもの────そう、カイロだった。
「まじ?サンキュ」
カイロを受け取った吉澤先生が心底嬉しそうな顔をする。