さくらの花が舞う頃に
「ある程度温まったら返してよ」
「はー?返すわけねーだろ」
吉澤先生と水川先生がそう言い合いながら私の横を歩いて行く。
残されたのは私と私の手の中のカイロだけ。
…………何やってるんだろ。
カイロ渡せなかったぐらいでこんなに落ち込んで、バカみたい。
私が早く言わなかったのが悪いのに。
たった一言、「カイロいりますか?」って言うだけだったのに。
ほんとにうじうじした性格になっちゃったな。
私は小さくため息をついて、まだ若干残る後悔の気持ちを振り切るように
カイロをポケットにしまおうとした。 すると。