さくらの花が舞う頃に




ポケットにあと少しで入るところだったカイロが誰かの手によって取られた。



慌てて手が伸びてきた方を見ると、そこにはカイロを片手に持った戸山くんの姿。



「あ〜。あったかー」



戸山くんがそう言いながらカイロを自分の頬に押し付ける。



「カイロって自然なあったかさでいいよな。寒くなったらポケットから取り出せるし。

作った人まじ天才」



なぜかそんなことに感動しながら、戸山くんがカイロを頬に押し付けながらそう言う。



「そんなに気に入ったんなら………それ、あげよっか?」



カイロにすっかり癒やされている戸山くんに私はそう言ってみた。



もともとは吉澤先生にあげる予定だったカイロ。



それを戸山くんにあげたところで、別にバチは当たらないだろう。



戸山くんがカイロを頬から離して、私をまっすぐ見つめた。




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