さくらの花が舞う頃に
「高2のときの夏休みにさ、学校の近くでキョロキョロしてる挙動不審な人がいたの」
佳奈が懐かしそうな表情になって語り始める。
佳奈が言う、「挙動不審な人」っていうのがもしかして………
「近くに行ってみたら、その人は何かを探してるっぽかった。
アスファルトに膝ついてすっごい焦ってて」
佳奈が言うたびに宮下くんが恥ずかしそうにそっぽを向いていく。
「あまりにも必死だったから、思わず声かけちゃって。
鍵とか携帯とか大事なもの落としたのかと思ったら、ストラップを落としたって言ったの」
ス、ストラップ?
聞き間違いかと思ったけど、佳奈の表情は変わらない。
そして、宮下くんの顔が熟したりんごのように真っ赤になっている。
「ストラップくらい、いいじゃんって思ったよ。
でもよくよく聞いてみたら、そのストラップは高校合格したときに
お母さんが頑張って作ってプレゼントしてくれたものなんだって」