さくらの花が舞う頃に
へえ、お母さんのこと大事に思ってるんだな……
そんなに大切にしてくれたら、お母さんも嬉しいよね。
「そんな大事なものなんだったらなくすなよってツッコみたくなるけど………
なんかかわいそうになったから一緒に探してあげたの。
なかなか見つからなくて二人で一時間以上探して、溝の中に落ちているのを私が見つけたときは
二人でハイタッチして喜んだんだ」
見ず知らずの人のために一時間以上時間を費やす佳奈ってすごいな。
それに、ハイタッチって…………結構良い雰囲気。
「帰り際に若干引くくらい、すごい勢いでお礼言われて。
ふっとその人の鞄を見たら書いてあったんだ。『宮下 快斗』ってね」
佳奈がそう言い終わると、宮下くんが耐え切れなくなったのか片手で顔を覆った。
それでも隠しきれていない耳は真っ赤に染まっている。