さくらの花が舞う頃に
ついこの間まで好きな人なんかいなかった私だから、恋愛がこんなに大変なものだとは知らなかった。
恋なんて、お互いを好きな人どうしがくっついてそのまま終了、だと思ってたけど………
「恋って複雑………」
考えていたことを思わず口に出してしまうと、私の横を通ったスノーボーダーの人が怪訝そうな顔をして
私を見た。
…………恥ずかし。
変なひとりごと聞かれちゃった。
一人顔を赤くして周りを見ると、佳奈とメグはもうだいぶ向こうにいた。
佳奈に教えてもらってメグもコツをつかんだのか、さっきよりも速く滑っている。
私も変なこと考えてないで早く追いつかないと。
そう思った私は、おそるおそるスキー板を動かす。