さくらの花が舞う頃に
「崖…………」
スキーで滑りながら私は呆然とつぶやいた。
だけど、前に見えるのは明らかに崖。
見た感じ、そんなに高い崖ではない。
だけど、あそこから落ちたら、しかもスキーのままだったら怪我なしでは済まされないだろう。
スキーのスピードは速さを増し、崖はどんどん目の前に近づいてくる。
もうダメ…………
私は無意識のうちに目をぎゅっと瞑った。 そして………
さっきまでたしかにあった、足から伝わる地面の感覚がなくなった。
そこでやっと、自分が崖から落ちたのだとわかる。
やがて足からスキー板が外れ、その足があらぬ方向へと曲がるのにそう時間はかからなかった。