さくらの花が舞う頃に




「さくら!!」



もう一度さくらの名前を叫んで、勢いよく斜面を駆け上がった。



リフトはもう動いていないから、自力で斜面を登るしかない。



上り坂なうえに、雪が積もっているから走りやすいわけがないけど。



それでも、俺は止まらずに名前を叫びながら斜面を駆け上がった。



「おい!さくら!!」



俺の叫びに応えるのは、ヒューッと吹く風と雪の音だけ。



肝心のさくらの声は少しも聞こえてこなかった。



くっそ………… あいつ、どこにいんだよ。



探せば探すほど、完全に無防備な俺の体も冷えきってくる。



でも、さくらはもっと寒いはずだから。



俺が探さないといけないんだよ。



そう決意を固め、もう一度斜面を駆け上がろうとしたときだった。





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