さくらの花が舞う頃に
視界の端に、黄色の物体が見えた。
反射的にそれを見ると、それは…………
「…………手袋」
しかも片方だけ。
嫌な予感が胸の中で黒い渦のように広がる。
偶然かもしれない。
何も関係ないかもしれない。
だけど。
俺はその黄色の手袋を拾った。
小さなリボンがついてるそれは、明らかに女子のものだった。
「………さくら」
手袋に向かって、小さくつぶやく。
さくらはこのゲレンデのどこかで待ってるはず。
早く見つけないと。
手袋を握りしめ、もう一度走り出そうと手袋から視線を外したそのときだった。