さくらの花が舞う頃に




視界の端に、黄色の物体が見えた。



反射的にそれを見ると、それは…………




「…………手袋」



しかも片方だけ。



嫌な予感が胸の中で黒い渦のように広がる。



偶然かもしれない。



何も関係ないかもしれない。



だけど。



俺はその黄色の手袋を拾った。



小さなリボンがついてるそれは、明らかに女子のものだった。




「………さくら」




手袋に向かって、小さくつぶやく。



さくらはこのゲレンデのどこかで待ってるはず。



早く見つけないと。



手袋を握りしめ、もう一度走り出そうと手袋から視線を外したそのときだった。





< 454 / 463 >

この作品をシェア

pagetop