さくらの花が舞う頃に




目の前の林の下に降り積もっている雪に、うっすらと二本の線があった。





二本の線─────それはきっとスキー板の線。




雪が降ったせいでだいぶ薄くなっていたけど、間違いなく雪の上に跡がある。




まさか…………



俺は握りしめていた手袋を無意識のうちに見た。



この手袋はこの林の前に落ちていた。



じゃあ、この線をつけたスキー板を使った人が手袋を落とした………?



またもや胸の中で嫌な予感が広がる。



線を見ると、かなり奥までそれは続いていた。




もしかしたら違うかもしれない。



誰かがふざけて立ち入り禁止の林の中に入っただけかもしれない。



だけど、俺の足は自然とその線を辿り始めていた。




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