さくらの花が舞う頃に
「もう着くから」
意識が朦朧としているさくらには、きっと俺の声は聞こえない。
だけど、少しでもさくらを安心させたくてそう言わずにはいられなかった。
案の定、返事をする声は聞こえなくてそのまま俺も歩き続ける。
すると。
首元をきゅっと何かに握られたような気がした。
ふっと首元を見ると、さくらの手が俺のパーカーの襟元を握っている。
「さくら?」
何いきなり。
少し驚いて、思わずさくらの顔を見る。
すると、さくらの口もとが微かに動いた。
「……………き……………」
「え?」