さくらの花が舞う頃に
「……………す………き…………」
…………………
たしかに、さくらはそう言った。
「好き」と、たった二文字を。
ただでさえ冷たい体がますます冷えきっていくのを感じた。
さくらが「好き」と言ったのは、きっと…………
戸山のことだ。
さくらは戸山の彼女だし、好きだと思うのは当たり前だけど。
だけど、さくらの口からその言葉は聞きたくなかった。
心なしか、そう言ったさくらはさっきよりも幸せそうな表情に見える。
その表情が、さらに俺を傷つけた。