さくらの花が舞う頃に
「えー。さくら好きな人いないの?なんで?」
夢愛が信じられない、といった顔で聞いてくる。
「うん……… なんか、男子って苦手。
私が、好きだって思う男子にまだ出会ってないだけかもしれないけど……」
「そうなんだ」
夢愛は最初は残念そうだったけど、すぐに笑顔になって言った。
「じゃあさ。もし、さくらに本当に好きな人ができたら私に一番に報告してよ」
「うん、わかった」
私も笑顔で返す。
「じゃあ、約束!」
夢愛が右手の小指を出したから、私は左手の小指を出した。
そう、このときはまだ平和だった。
ささいなことで笑いあって、みんなと好きな人の話をして、夢愛と指切りをして。
まさかこのあと、この平和が崩れ落ちるだなんて全く予想もしていなかった。