さくらの花が舞う頃に




………そうかもしれない。



吉澤先生にそう言われ、今までの自分を思い返す。



高校に入ってから、一度も大声で泣いたり笑ったりしたことがなかった。



笑いたいときがなかったわけじゃない。



泣きたいときだってたくさんあった。



ただ、笑っちゃいけないような気がしただけ。



ここは泣く場所じゃない、と勝手に自分が思っていただけ。



そんな私の心の声が聞こえたかのように、吉澤先生が大きく頷いた。



「笑いたいなら笑えばいいじゃん。

辛いなら泣けばいいじゃん。

さくらが楽しいときはみんな笑ってくれるよ。

逆に、さくらが辛いときには一緒に泣いてくれるやつが絶対いるよ」




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