臆病者の偶像
 39歳という若さで亡くなった父に後9年で追いつくと思うと考えさせられるものがある。

父の背中はまだまだ遥か遠く、視界に捉えることすらできていない。やはり父という存在は偉大だ。

 私の父は近所でも有名になるほどに怖い人だった。小学生時分の俺もよくグーで思いっきり殴られたものだ。厳しい父だった。例えるなら、"昭和時代の親父"という感じである。ちゃぶ台をひっくり返さないだけまだマシである。

そんな父が今の俺の姿を見たら何と言うだろう。やっぱり怒鳴られるんだろうな。きっと2、3発じゃきかないくらい殴られてるに違いない。その光景を容易に想像することができた。俺は自分の頬をそっと撫でた。
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