雪国ラプソディー
「あ、そうだ浅見。連絡先教えて」
何かあると困るから、と付け加えられる。
私はスマートフォンを出すと、小林さんと連絡先を交換した。
「じゃあまた、明日。……ちゃんと水飲めよ」
二次会会場へ友達を乗せていく約束があるらしく、私を降ろすと小林さんはそのまま出かけていった。
(行っちゃった……)
少し大きな荷物を抱えたまま、私はその場に立ち尽くす。結局完全に小林さんのペースに流されてしまっていたことに、今更ながら気付いた。
「私、小林さんと番号交換しちゃった……!」
さっきより橙の光が強くなり、私の影が足下に伸びている。
どうしよう、と頬を押さえてしゃがみ込むと、影も一緒に丸くなった。
この流れは夢? やっぱり私相当酔っているの?
くらくらする頭を振りながら冷静さを取り戻そうと必死になっている私の前に、制服姿の女性が駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか?! 当ホテルの前でどうされました?!」
「へっ……あ、あの、今日予約しています、浅見です」
私は慌てて立ち上がると、ぺこりとおじぎをしたのだった。