雪国ラプソディー
「んー……美味しいです」
感嘆のため息を漏らしながらも、既に2つめのマドレーヌを開封している私。簡易的なものとは言え、さっきホテルの朝ご飯を食べたばかりだ。もしかしたら、別腹は本当に存在するのかもしれないと思いながら、口を大きく開けてかぶりつこうとした。
「無理しなくていいからな」
ちらりと私を見て、また前を向く小林さんに気付いた私はハッとした。私ったら本当に気が利かない。危うくこれも食べてしまうところだった。
「すみません、私ばっかり。小林さんも食べますよね」
手に持ったまま、まだ無傷のマドレーヌの包装を半分程開けて食べやすいように工夫すると、小林さんの口元に運んだ。
「小林さん、口開けてください」
「は?! 俺はまだいいから浅見が食え」
左手で押し戻されて、マドレーヌは結局私のところへ戻ってきてしまった。
本当は小林さんも食べたかったのでは、と思いつつも、いいにおいに我慢出来ずに結局パクリと頬張ってしまう。
ああ、美味しい。甘さ控えめで、何個でもいけそうだ。
「そんなに頬張ったら、口の中の水分全部無くなるぞ」
小林さんが急に言うものだから、私はお約束通りむせることになる。