雪国ラプソディー
「喉渇いただろ。少し休憩しようか」
コンビニへ寄って飲み物を買った私たちは、車の中で少し休憩を取ることにした。私がガイドブックを見ていると、小林さんがそのページに載っている地図を指さして言った。
「今この辺だから、あと20分くらいかな」
「結構遠いんですね……」
「そんな遠い所に行こうとしてたんだろ。ひとりで」
「う、それはそうなんですけど」
言い返せなくなった私は、ずずずっとカフェラテを啜る。そんなに〝ひとり〟を強調しなくたっていいのに。
あんなに予定だけは熱心に立てていたものの、本当に私ひとりだったら途中で諦めていたかもしれない。小林さんと、小林さんの車には大感謝だ。
「それにしても」
小林さんはマドレーヌをひとくちかじると、小さな声でつぶやいた。
「こんな偶然もあるんだな……」
「偶然?」
「地元の友人の披露宴で、まさか浅見に会うとは」
今更だけど、と言いながら残りのマドレーヌを口に放り込むと、小林さんはさっき買ったカフェオレにストローを挿した。
相変わらずの淡々とした言い方に、思わず私のいたずら心に火が点く。
「そんなこと言って。本当は私に会いたかったんじゃないんですか?」
なーんて。ニヤニヤしながら振ってみた。
ずっとやられっぱなしの私だから、たまにはこれくらいの意地悪許されるだろう。
小林さんはそんな私にしっかり目を合わせて、少し微笑んで呟いた。
「ああ。すごく」