雪国ラプソディー

なんとか耐えられる温度にまで下がった車に乗り込み、またしばしのドライブだ。


小林さんがカーラジオをつけると、懐かしいメロディーが聞こえてくる。


「あれ? この曲……」


ちょうど中学生の頃に流行った曲だ。あの頃の思い出が色あせた写真のようにぼんやりと浮かぶ。


「懐かしい。CD持ってた」

「え、小林さんも?! 私も持ってました」

「CDってさ、何故か発売日の前日から売ってるよな」


遠くにいながらも同じように青春時代を送っていたことに、嬉しくなる。ほんの些細なことだけれど、こうやって共通点を見つけると一歩ずつ近付いている気がして。


窓の外には、気付けば田園風景が広がっていた。昨日新幹線から見たときは緑一色かと思っていたのに、よく見ると稲穂の先がほのかに黄色味を帯びている。無言だけれど、密やかに秋はそこまで来ているんだ。


ーー私もそろそろ、時間を気にしないと。


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