雪国ラプソディー

「うわあ、美味しそう! いただきます」


目的の蕎麦屋には、ランチタイムギリギリに入ることができた。この時間でも、休日ということもあってかほとんどのテーブルは埋まっている。

私は、目の前の光景にわくわくしながら箸を割った。

小林さんは盛り蕎麦で、私は冷たい山菜きのこ蕎麦を注文した。この辺では有名だという珍しい山菜と肉厚で食べ応えのあるきのこに、つやつやでのどごしの良い蕎麦が絶妙だ。添えられた大根おろしまでもが美味しい。


「小林さんは、いつもこんなに美味しい蕎麦を食べてるんですね」

「ここを通るときはいつも寄ってるかな。仕事でもよく来るし」


ず、ずるい……!
私は、思わず普段食べているローテーションのようなランチを思い出していた。
〝自炊する!〟と意気込んでは毎回三日坊主の、私の味方はもっぱらコンビニだ。会社の近くに3軒もあるので、日替わりでそれぞれのカラーがよく出たパスタが味わえる。
……時々、とてつもなく虚しくなるけれど。

こんな美味しいお店があったら、毎日通いたい。


「ほら」


ゴト、と置かれたお皿の上には、追加注文をした揚げたての天ぷらたちが並んでいる。


「好きなの食べていいよ」

「本当ですか?!」


言うが早いか、私は即座に箸を伸ばした。

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