雪国ラプソディー

茄子の天ぷらを頬張りながら、ふと思い出して聞いてみる。そう言えば今日一度も話題にしていない。


「ところで、昨日の二次会は楽しかったですか?」

「は……!?」


何の気なしに聞いただけだったのに、小林さんが妙に慌てたので不思議に思った。しかも軽くむせて、冷たい蕎麦茶を一気に飲み干している。


「大丈夫ですか?」

「あ、ああ。……楽しかったよ」

「それなら良かったです。私のせいで小林さんの評判が下がったらどうしようかと思いましたよ」


思い出されるのは昨日のことだ。私と一緒にいるところを小林さんの友人に見られてしまい、きっと嫌な思いをしたはず。


「ふふ、でも小林さんがナンパしたら成功率高そうですね」

「どういう意味だよ……」


その話はしたくないとばかりに、海老の天ぷらにかじりついている。


(そのまんまの意味だけど、言ったら怒りそうだなあ……)


いい食べっぷりの小林さんをこっそり観察しながら、私は贅沢な食事を楽しんだ。


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