雪国ラプソディー
「ふう、お腹いっぱいです」
お腹をさすりながら蕎麦屋を出ると、またうだるような暑さが待っていた。私は、先に会計を済ませてくれた小林さんへ近付く。
「小林さん、自分の分は払います」
「いいから」
財布を出すと、首を横に振られた。
「でもっ、私天ぷらも食べちゃいました!」
「ーー今度本社に行ったら、奢ってくれるんだろ? たっかいやつ」
最後のところでにやりと含み笑いをされる。私がどう言えば言い返すことが出来なくなるのか、ちゃんとお見通しなことが悔しい。
ーーどうせ奢らせてなんかくれないくせに!
喉までそう出かかったけれど、ここはおとなしく〝先輩〟に従っておくことにした。
「ごちそうさまです……」