雪国ラプソディー
「それ、ナンパって言わないですからね!」
「浅見って本当、素直で騙されやすいよな」
「小林さんが意地悪なんです!」
ーーこれが思いが通じた後の会話だなんて、誰が思うだろう。
私が車から降りると、小林さんも降りてトランクから荷物を出してくれた。にやにやしながらペンギンも手渡される。
「じゃあ本当に、帰りますね」
「気を付けて。またそっち行ったら、飯行こう」
「はい!」
次はいつ会えるかな、とうきうきした気持ちでいると、少し声のトーンを下げて、付け加えられた。
「その前に、会いたくなったら言って」
どうしてここで、そんな優しい顔をするんだろう。やっぱり小林さんはずるいと思ったけれど、魔法にかかったように肯定の言葉しか出てこなかった。
「……ハイ」
赤い顔を隠すように下を向くと、いつもの笑い声と一緒に、優しく頭をなでられた。
ーーそんな私の髪を微かに揺らす程度の、頬をなでる風が吹く。
新たな季節を運んでいくであろうその風に、またすぐ会えますようにとお願いをして。
昨日見た絵里さんのドレス姿に、少しだけ自分の未来を重ねてみてもいいよね。
ーー自分に言うのも変だけど、おめでとう!
心の中の声に、祝福されたような気がした。
終わり