雪国ラプソディー

「あっ、ぶねー」

頭上から声が降る。
知らない男の人の声だ。

思ったより痛くない。
雪は意外と柔らかいんだ。初めて知ったよ。
雪に埋まったことなんて、生まれてこの方一度もなかったし。でもジンジン痺れる冷たさが辛い。起きなくちゃ。


「う……」


手を突いて、体を起こす。
良かった。私、生きてる。骨も折れていないみたい。

座り込んだまま、雪だらけのコートを眺めながら思った。雪が冷たすぎて頭がボーッとしてくる。


「おい」


またさっきの声。少し低くて、しっかりした声だ。

私のこと?

顔を上げて振り返ると、やっぱり知らない人だった。
だけど彼の手には、さっきまで私が持っていた黒いケースがあって。


黒のダウンジャケットを着て、黒い長靴を履いた完全装備のその人は。


「何やってんだ、危ないだろ。あんたクラッシャーか」


プロジェクターの無事〝のみ〟を確認しながら、心底呆れた目をしていた。


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