雪国ラプソディー
完全に苛ついています風の彼はため息を吐くと、テンション低めのまま私の方へ近付いてきた。
「……マナカ商事 東部第4営業所の、小林ですが」
え、営業所?!と、言うことは。
ーーー彼は、課長が言っていた迎えの社員だった。
「あっ、あの、それはどうも。本社から来ました浅見です。」
気まずさから焦って挨拶を返す。ペコリと下げた頭を上げると、仏頂面と目が合った。
「小林さん……でしたよね。よく分かりましたね、私のこと」
「さっき社員名簿で確認したから」
社員名簿。社内のグループウェアソフトで管理されているそれは、そういえば顔写真も閲覧できたっけ。
さすが営業職。事前準備をちゃんとしていた小林さんに感動していると、ため息を吐かれた。
「待ち合わせ相手を知らなくて、どうやって待ち合わせるんだよ。連絡先も知らないのに」
ごもっともです……。