雪国ラプソディー
「わああああ!ちょっと、何するんですか!」
世に言う〝お姫さま抱っこ〟に本気で動揺した。一気に近くなった顔の距離に、心臓がバクバク跳ねる。
「うるさい、ちゃんとカバン持ってろ」
怒られて、思わず落としそうになったカバンをギュッと引き寄せた。目のやり場がなくて、俯く。
小林さんとは、ほんの十数分前に初めて会ったばかりだというのに。
今日は朝から心臓に悪いことばかりだ。
「駐車場まで少し歩くから。我慢して」
「……」
恥ずかしすぎて死にそう。