雪国ラプソディー
雪の国に迷い込んだお姫さま

ギュッ、ギュッと音がする。
小林さんが雪を踏みしめる音だ。
自然の音は、気持ちがいいなあ。

そうやって必死に気を紛らわす。

ああもう、何でこんなことに。確かにさっき雪の国のお姫さまみたいって思ったけど。お姫さま抱っこして欲しいなんて1ミリも思ってない!
今まさに人生で一番恥ずかしい状況だっていうのに、小林さんとくっついている部分から伝わる体温に安心している私がいる。

うう、人肌ってあったかいな。


「悪かったな、月曜日から」


上からポツリと呟かれた。
急に声をかけられて、どう返事をしていいのか分からなかった。固まったまま聞く。


「昨日まではこんなに雪無かったんだ。一晩でこれだろ、交通がマヒしてて」

「そうなんですか」

「今朝から高速も在来線も止まってる」


やけに静かなのはそのせいか、と納得した。車も多少走ってはいるけれど、街中の生活音が感じられない。私たちが歩いている道も、普通には歩けないほど雪が積もっている。小林さんは他の人が歩いた跡を器用に踏んで前に進んでいるけれど、時々足を取られていて大変そうだ。何だか申し訳なく思いながら、積もった雪の表面を見た。まだ新しいようで、きらきらと反射している。

これが一晩で降ったのかと思うと、ぞっとした。
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