雪国ラプソディー
駅前の通りを少し歩いて一回曲がると、広い土地に出た。まばらに車が停まっているのが見える。ここが駐車場のようだ。
昨日から停めていたのだろう。車に積もった雪で車体がどんな色なのか分からなくなっている車もある。
「よっと」
ザク、と小気味良い音がした。降ろしてもらった私のヒールが、まだ柔らかい新雪を潰した音だ。
急に離れたせいか、体を吹き抜ける風がより冷たく感じる。
「ありがとうございました。……すみません、重いのに」
ここまで運んでもらったお礼を言うと、小林さんはニヤリと笑った。
「本当。腰がやられるかと思った」
「っ!」
気にしてるのに!デリカシー無さすぎる。
……怖いから心の中でしか言えないけれど。
ピピッと車のロックが解除される音がした。
「乗って」
プロジェクターを後部座席に置いて、小林さんは運転席のドアを開けた。
私はそこで困ってしまう。
この場合、私はどっちに乗ればいいの?
助手席?後部座席?
迷いに迷って、私は後部座席のドアを開けた。
「……何してんの」
ものすごく不機嫌そうな声が聞こえて、私は体を半分車内に入れた状態で固まった。
ーーーこれはきっと私、選択ミスりましたわ。