雪国ラプソディー


「そんなに嫌?俺のこと」


ウインカーがカチカチ鳴る。
小林さんは、ゆっくりハンドルを切って左折した。もこもことした雪にタイヤが乗り上げて、一瞬体が浮かぶ。本当にすごい雪だ。


「いっ、いいえそんなこと!」


怖いけど!まだ嫌いじゃないです。
こんなこと、声に出したら外に放り出されそうで絶対に言えない。

結局私は助手席に乗り直した。さっきの声が怖すぎたのと、ルームミラーでにらまれ続けることに耐えられないと思ったから。


「普段車に乗ることがなくて、どうしたらいいか判らなかったんです」


すみません、と小さく謝ると、ふうん、と返ってきた。
電車通勤で仕事もほとんど内勤の自分には、こんな簡単な選択も出来ないんだ、と思うと気分が落ち込んだ。

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