雪国ラプソディー

沈黙が続いて気まずい。
初対面でお姫さま抱っこされた次は車で二人きりとか、何の罰ゲームなんだろう。

ふと窓の外を見ると、雪雲の切れ間から青空が覗いていた。射す陽が何本もの線のようで神秘的に感じる。

このまま天気が回復するといいんだけどな。

もう少し視線を下げると、街の人たちが至る所で雪かきをしているのが見えた。赤や緑が鮮やかな、見慣れない道具を使って丁寧に雪を運んでいる。屋根の上にも人がいて、スコップで雪の塊を下に落としていた。


うわあ、大変だ。あれを毎日やっているなんて。


そんな雪かきの様子をぼんやり見ていたら、今度は遠くからシャリシャリと音が聞こえてきた。鈴の音に似ているけど、何かの祭りだろうか。
思い切って聞いてみた。


「今日は、お祭りか何かですか?」

「は?」


信号待ちだったので、こっちを向いた小林さんに軽くにらまれた。ひえ、怖い!


「ごめんなさい!いやっ、あの、シャリシャリ聞こえたから気になって」


必死に弁解する。少しでも場が和めば、と思って言ったのに、かえって空気が悪くなってしまった。発言を取り消したい思いに駆られる。



「……ああ」


少しして。
急に納得したような声を上げた小林さんは、前を指差して言った。


「あれだよ。除雪車」

「ジョセツシャ……?」


指差した方を見ると、真っ黄色なブルドーザーのような車がゆっくり走っている。道路の雪を巻き込み、勢いよく吐き出して。
シャリシャリ鳴っているのは大きなタイヤに巻かれたチェーンの音だという。
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