雪国ラプソディー

ひとつ気付いたことがある。小林さんは、意外と面倒見がいい。
意外と、なんて言ったらまた怒られそうだけど。言い方はキツいし表情も少ないけれど、本心は優しいみたいだ。もしかしたらきょうだいがいるのかもしれない。


「小林さん」


私は、ずっと気になっていたことを聞いてみることにした。


「なに?」

「この大雪でも、お客さんいらっしゃるんですね」


お店も休むくらいの大雪だ。来訪自体中止になりそうなものなのに、と単純に思った。


「まあ、普通はキャンセルだな」


小林さんが苦笑する。色々と不運が重なったと漏らした。


「村山がメイン担当のプロジェクトで、相当頑張っていたんだ。先方との関係も良好で」


普通はこちらが出向くのに、商談相手が来てくれるのもすごいことだ。相当相手が入れ込んでくれているのだろうか。

もしかしたら、村山さんはすごい人なのかもしれない。ついさっき『一見軽そう』から『見た目通り軽い』に昇格した印象はなかなか払拭できないけれど。


「あいつが先週本社に出張していたのは、営業本部に商談内容の決裁を貰うためだったんだよ。新しいビジネスプランも同時に提案していて、なかなかの高評価だったらしい」

「そうだったんですね……」


安心したら気が抜けたんだろうな、と小林さんは言った。パソコンはちゃんと持って帰ってきたのに、プロジェクターは忘れてきたそうだ。

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