雪国ラプソディー
「そう言えば、村山さんは」
さっきこの部屋に案内されてから、見ていない。電話が長引いているのだろうか。
特に深い意味はなく聞いたのに、小林さんは私をちらりと見る。
「気になる?」
「あ……いや、ええと、そういう意味じゃ」
必死に否定してしまい、自分が滑稽に思えた。今日初めて会った人に誤解されたとしても、今後の生活に何も影響しないはずなのに。
「俺はあいつのこと、後輩としてはいいやつだと思ってる。けど……浅見は気を付けろよ」
どうしてですか、と聞こうとしたとき。
『小林さーん、カドノ様いらっしゃったので、同席お願いしまーす!』
入口の方から、村山さんの明るい声がした。
小林さんは立ち上がって、ジャケットを羽織る。
「今行く。……それじゃ、寒かったら温度上げろよ」
私は聞けないまま、出て行く背中を見つめていた。