雪国ラプソディー
親切心と羞恥心
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どれくらい時間が経ったのだろう。
ガヤガヤと複数の声がする。楽しそうに談笑する声が目立つ。
商談、うまくいったのかな。
「浅見」
複数の人の声が遠ざかったと同時に、小林さんが部屋の外から顔を覗かせた。何だか雰囲気が柔らかい。
「終わったんですか? お疲れさまでした」
「ああ。今から出られるか?」
小林さんは既に上着を着ていた。最初に駅で会ったときと同じ、黒いダウンジャケット。
「大丈夫ですけど……どこに行くんですか?」
「買い物あるんだろ。店まで連れて行くよ」
……そうでした。
急きょ泊まることになってしまった私。
何も持ってきていないことを知って、小林さんはお店に連れて行ってくれると言ってくれていたんだった。
私はコートを着て靴を履いた。部屋を暖かくしてもらったお陰で、パンプスもタイツもすっかり乾いていて嬉しい。
「ちょっと出てきます」
小林さんが声をかけると、中村所長は急がなくていいからね、と送り出してくれた。
村山さんは、徒歩で来たお客さんを送っていったそう。この雪なのに徒歩でいらっしゃるとは……さすが近所。