雪国ラプソディー
目的地に着いたのか、車は静かに停車した。
「着いたよ」
言われて辺りをきょろきょろと見渡すけれど、真っ白で何も見えない。
「あの、ここは?」
「これ使って」
私の質問には答えずに、小林さんは後ろの座席に手を伸ばしてつかんだマフラーを差し出してきた。黒とグレーのストライプ柄のそれは、男物のように見える。私は意味がわからず、そのマフラーと小林さんを見比べる。
「ここは街中より冷えるから」
家にこんなものしかなかった、と半ば強引に押し付けられる。そのまま小林さんは、車から降りた。
私のためにわざわざ持ってきてくれたことに嬉しくなる。早速首に巻こうとしたけれど、ある考えが浮かんで、そのまま固まった。
もしかしたらこの進路変更は、最初から予定されていたものだったのかもしれないということ。
ーー私の顔、今どれくらい赤くなっているんだろう。
そっと首に巻くと、それはとても暖かくて。
微かに、昨日お姫さま抱っこされたときと同じ、小林さんのにおいがした。