雪国ラプソディー
「……そろそろ戻るか」
腕時計を見た小林さんが、終わりの時を告げる。私たちは車へと戻った。
「ありがとうございました。何だか悩んでることが馬鹿らしくなっちゃうくらい、すっきりしました」
帰りの車の中、お礼を言う。面と向かって言うのは気恥ずかしかったので、フロントガラスを見つめたままで。
「少しは気分転換になったのなら、何より」
隣からは私の照れが伝わっているのか、笑いを含んだ優しい声色。
ーーと、思いきや。
「……あれだけはしゃいでたら、そりゃすっきりするよな」
予想外の言葉に、一瞬気恥ずかしさも忘れて思わず振り向いてしまった。小林さんは、またしても意地悪そうな、楽しそうな顔。
「雪に頭から突っ込んだり、白鳥と本気で遊んだり。浅見って本当に成人してる?」
「なっ……」
昨日の出会いの瞬間から今までの出来事がフラッシュバックした。
もう、どうして思い出させるようなことを言うんだろう。
「浅見、随分顔が赤いけど?」
「……ほっといてください……」
もう余計なことは喋るものか。遠回しに子どもっぽいと言われているようで恥ずかしい。
私はそのまま、窓の外を眺め続けた。