雪国ラプソディー

ぽかんとしていると、車が駅前に着いてしまった。今日は朝からの陽射しと気温、そして除雪のお陰で、ちゃんとロータリーが機能している。車はくるりと回って停車した。


「次の新幹線は10分後か」


素早くスマホで時刻表を検索すると、小林さんは急かすように言う。


「これを逃すとしばらく待たないといけないから、急いで」

「えっ! はっ、はい」


バタバタとシートベルトを外して、ドアに手をかける。カバンをつかんで、私は勢いよく振り返った。


「小林さん。本当にお世話になりました」

「ああ、元気で」


無愛想だけど、やっぱりどこか優しい。
小林さんは、あ、と思い出したように言った。


「浅見、社員名簿の写真、撮り直してもらったらいいんじゃないか」

「え、そんなにひどい顔でしたか私……」

「ああ。絶望的な顔をしてた」

「そんなあ」


まさか、昨日居酒屋で言いかけたことって、このことだったのだろうか。最後の最後に、ダメ出しされる客人って……。

へこんだ気持ちのままドアを開ける。外へ一歩踏み出した私の背中に、一段と優しい言葉がかけられた。


「今の方が、ずっといいよ」


最後の最後の最後に、大どんでん返し。


「……ありがとう、ございます」


たったひと言だったけれど、そのひと言が温かすぎて。

不意打ちに泣いてしまいそうになってしまった私は、もう小林さんの顔を見ることができなかった。

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