雪国ラプソディー
忙しくも午前の業務を終え、いつも通りランチを食べ、睡魔と闘う午後になった。
(うう、眠い……)
パソコンの画面に浮かぶ文字がかすんで見える。今日はお昼ご飯を食べ過ぎたな、と反省しても後の祭りだ。
今日中に入力を終えなければならないファイルがたまっている私は、頬をペチペチ叩いて気合いを入れ直した。
「浅見さーん」
そんなとき、またもや私を呼ぶ声がする。少し離れたところにいる先輩が受話器を持ったまま声をかけてきた。
「はいっ」
「浅見さん、外線6番」
またか、と心の中で毒付く。
私だって真面目に働いているのに、こうも邪魔されていては仕事にならない。
村山さんにはひと言、言っておかないと。
浅見だって言うときはしっかりはっきり言いますからね!
私は乱暴に受話器を取った。
「だから、仕事の邪魔しないでくださいって何度も!」
『……』
相手は無言。いきなり大きな声を出したから、びっくりさせてしまったようだ。
たまには鼠だって猫に噛みつくんだから、と内心ほくそ笑んでいると、静かで落ち着いた声が鼓膜に響いた。
『……浅見?』
紛れもないその声は。
「小林、さん……?」
正真正銘、私が一番会いたい人だった。