雪国ラプソディー
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「おはようございます」
何とかいつも通りの時間に出社出来て安堵する。コートをかけて自分のデスクにつくと、隣の席の先輩が話しかけてきた。
「浅見さん、今日の服かわいいね。デート?」
「ち、違いますよ!」
首と手をぶんぶんと振った。人から気合いの入った格好だと思われているとは、恥ずかし過ぎる。
そのまま私は、赤くなる顔を隠すようにパソコンの電源を入れた。
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カチ、コチーー。
ちらりと壁に掛けてある時計を確認する。
小林さんがこっちに着くのは、お昼前だったはず。もうそろそろ来ていてもいい時間だ。
私はそこで、本社に着いたら連絡をもらえるかどうかを確認していなかったことに気が付いた。舞い上がり過ぎて、何も決めていなかった自分が情けない。もし会えなかったらどうしよう、と不安になってくる。
私が工藤課長に声をかけられたのは、そんな時だった。
「浅見さん。ちょっと営業部に行って、橋本部長から書類貰ってきてくれないかな?」
営業部長の出張申請で気になるところがあるという。彼は確か先週、専務と一緒に出張に行ったはずだ。
「分かりました」
私は偶然にも営業部へ行けることを嬉しく思いながら、軽い足取りで自席を後にした。