雪国ラプソディー
彼女と知り合ったのは、大学2年生の秋だった。
後期の授業開始のその日、私は新しく心理学の授業を取ることにしていた。仲の良い友達は違う授業を受けているので、このコマはひとりで受講する。講義室の真ん中ほどに着席すると、人気のある授業なのか大きな講義室だというのに、あっという間に学生で埋まっていく。そんな不思議な光景に思わずきょろきょろと周りを観察していた、そんな時だった。
「ーーすみません、隣空いてますか?」
声をかけられて顔を上げると、風に揺れそうなさらりとしたボブヘアーがよく似合う、笑顔の眩しい彼女がいた。
それから半年間。週1回、水曜日の3コマ目だけ並んで授業を受けた。
学年も学部も違う私たちだったけれど、妙にウマがあって。
授業の後カフェに行ってお喋りしたり、買い物に付き合ってもらったりと、絵里さんは友達のように親しくしてくれた。面倒見の良いお姉さん気質の彼女は、いつも優しくしてくれた。
私より一年先に卒業した絵里さんとは、忙しくてなかなか会えなくなってしまったけれど、時々メールで近況を報告し合っていた。
前に会ったのは、ええと、確か去年の春。
いつものようにランチをして、いつものように他愛もない話をして、いつものように『次はどっちかの結婚式でね!』と冗談を言って別れたはずだった。
その知らせが届いたのが、今年の2月。
〝結婚することになりました〟
その内容に本当に驚いたけれど、嬉しかった。絵里さんには幸せになって欲しかったから。あの素敵な笑顔を、旦那さんへ毎日見せていて欲しい。
ーーというわけで、大安吉日の本日。
私は絵里さんの披露宴に向かっている。