雪国ラプソディー
「でも、まさかねえ」
招待状を再び開いて、ぽつりと呟く。
問題は会場の住所だ。場所は違えど、同じ県内ということには変わりはなくて。
「絵里さんも、雪国の仲間入りかあ」
こんなにすぐこの地へやってくることになるなんて、正直思ってもみなかった。
あの大雪の中、突然の出張でここに来たのが半年前になる。何がなんだかわからないうちに営業所の忘れ物を届ける〝おつかい〟が始まって、初対面だった小林さんと言い争いをしたり、相談に乗ってもらったりしているうちに、気が付いたら好きになってしまっていた。
その後小林さんは私が勤務する本社に出張する機会があったというのに、特に目立った行動はできなかった。
小林さんに出会ってから私の生活は一変して、何だかんだと充実している(気がする)。仕事も目標を見つけて頑張れるようになったし、やりがいも感じるようになってきた。
今日こうしてこっちまで来ていることを、本当は事前に小林さんに連絡をして言うべきだったと思う。そのことについては少し、いや、かなり後悔している。
何故なら披露宴が行われる今日は土曜日で、せっかく遠出をするからとホテルまで取ってあるからだ。明日の日曜日はゆっくり帰る予定のため、私には時間がある。
〝先輩の披露宴でそちらに行くので、会えませんか?〟
たったそれだけ、言えたらよかったのに。
意気地なしの私は、チャンスを自ら棒に振った。
(私って、なんて弱虫なんだろう)
大きなため息を吐きかけて、慌てて口を抑える。
(ダメダメ! おめでたい日なのに)
小林さんが次に本社に来るのはいつになるんだろう。次こそは、お礼がてらどこかでゆっくり話をしたい。