雪国ラプソディー
流れる景色の中、水田が目立ってくる。揺れる若い緑の穂が、夏の爽やかさを伝えてくれるようだ。
(村山さんだったら、こういうとき積極的なんだろうな)
相変わらず日課のようにからかってくる、営業所の村山さんのことを思い浮かべた。
本当は営業部に用事があるくせに、わざわざ秘書課の私宛てに電話をかけてくるという、怖いもの知らずの彼。それくらい肝が座っていたら、私ももっと積極的になれるかもしれない。
(でもあんなにグイグイ来られたら、小林さんきっと困っちゃうだろうな)
表情がやや乏しい小林さんが、思いっきり困っている場面が容易に想像できてしまい、思わず笑ってしまった。
その時、車内に特徴的なメロディーが流れる。もうじき駅へ到着する合図だ。
『ご乗車、お疲れさまでしたーー』
(あっ、いけない!)
車内アナウンスで我に返った私は、いそいそと降りる準備を始めた。