雪国ラプソディー
(うわあ、すごい!)
無事に仕度を済ませ披露宴会場前のホールへ足を踏み入れると、シャンデリアの光が拡散されて一瞬目が眩む。ふわふわの絨毯に靴が包まれるようだ。
私も社会人になってからは結婚式や披露宴に招待される機会が増えてきたけれど、どうにもこの緊張感というか、非日常的な空間には毎回ドキドキしてしまう。
荷物をクロークに預けて受付へ向かう。慣れない手付きでまごつきながらご祝儀を手渡した。
「お、おめでとうございます……」
「ありがとうございます。浅見様ですね」
親族のみで行われている挙式が終わり次第、入場できるようになるらしい。
もらった席次表はとりあえずサブバッグへ入れておいて、飾ってあるウェルカムボードや、新郎新婦の写真が置いてあるコーナーを眺める。
たくさんの写真の中には、私の知らない時代の絵里さんがいる。当たり前のことなのだけれど、新鮮な気持ちになった。
そして、初めて見る旦那さんはどれも優しい表情で絵里さんを見つめていて、写真だというのにときめいてしまった。
(仲良さそうで、羨ましいな。いつかは私もこんな風に……)
そんなことを無意識に思い描いていると、ある特定の顔が浮かんできたので慌てて頭を振った。
(わた、私ったらこんなときに何考えて……)
ひとりだと余計なことばかり考えてしまって困る。周りの人に赤い顔が気付かれないようにそっと俯いていると、会場の扉が開いた。