雪国ラプソディー
会場内にがやがやと声が増えていく。周りを見渡すと、ゲストは半分以上が着席しているようだ。
同じテーブルに着いた両隣の人と軽く挨拶をしていると、給仕係の人が目の前のグラスに食前酒を注いでくれた。
(それにしてもキレイなお皿だなあ……)
ピカピカに磨き上げられた食器にすら、ため息が出る。
これからどんな料理が運ばれてくるんだろうと想像しながら、思わずスマートフォンのカメラでその鏡のようなお皿を勢いよく撮影した。
その時だった。
「ーーもしかして、浅見?」
「はい?」
突然後ろから名前を呼ばれて振り向くと、ダークグレーのスーツが目に飛び込んできた。
聞き覚えのある、この声は。
「え、こ、小林さんっ?!」
全く予想もしていなかった小林さんの登場に、驚きすぎて膝の上に置いていたハンカチを床に落としてしまった。慌てて椅子から立ち上がり、ハンカチを拾う。
再び顔を上げてもまだそこに小林さんは居て。私の頭は未だ現実に追い付かないようで、何度も何度もまばたきをした。