雪国ラプソディー

ーー小林さんが、絵里さんの旦那さんのお友達だったなんて! 何て世間は狭いんだろう。


「それにしても……」


ひとりで勝手にパニックに陥っている私を置いて、小林さんは私の頭から足先までじーっと見ている。その視線に気付いて顔から火が出そうになった。


「別人みたいで最初分からなかった」

「あは、あはは。詐欺レベルにしてもらっちゃいましたから」


小林さん、絶対引いている。それもそのはずだ。

ハタチのときに買ったパステルイエローのドレスは、2回しか袖を通す機会がなかったから、今日はどうしても着たかった。スカート部分がオーガンジー素材で作られていて、歩くとふんわり揺れる。
この色と形から毎回〝もしかしたら今日で着納めになるかもしれない〟と思わずにはいられない、年齢問題に敏感な乙女心を刺激するドレスなのだ。

髪の毛だって、これでもか! というほど編み込んでまとめてもらっている。軽くコテで巻いて、耳の前に垂らしてもらった後れ毛がお気に入りだ。

更に、パーティーメイクなんて自分ではまったく上手くできないので、ヘアセットと一緒にプロに仕上げてもらっている。もちろん、普段と目の大きさがあからさまに違うことだって自分で分かっている。


つまり簡単に言うと。
本日、通常比100倍の浅見さんなんです。

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