雪国ラプソディー

「新婦とは、友達?」

「大学の時の先輩なんです。友達みたいに良くしてもらって」

「そうか」


無意識だとは言え、目を細めて優しい顔を見せられると息が止まりそうになる。


「新郎は、俺の高校時代の友達なんだけど、いいやつだからさ」


さっきの写真を見たときに仲の良さは感じたけれど、後押しするようにそう言われるととても安心できた。素直にそう思えてしまうのは、もう重症の証だろうか。



小林さんと話しているうちに、会場の入口付近がバタバタと慌ただしくなっていることに気が付いた。


「……そろそろ始まりそうだな。じゃあ、また後で」


小林さんはそう言うと、自分のテーブルへと戻っていく。その後ろ姿を目で追いながら、ふ、と息が漏れた。


(どうしよう、まさか小林さんと会えるなんて)


気が抜けてへなへなと座り込んだ私に、左隣の席にいた絵里さんの中学時代の友達が話しかけてくる。


「ね、さっきの人彼氏さん? かっこいいですね」

「へ?! いや、えっと、会社の先輩です……」


か、彼氏だなんてとんでもない!
……本心としてはいつかそうなってくれたらいいなあとは思うけれど、人の気持ちというのはなかなか伝わりにくいようで。


(つい悪態をついてしまう私がいけないんだけれど)


少しだけもやっとした気持ちのままちらりと小林さんに視線を向けると、友達なのか同じテーブルの人達と楽しそうに談笑していた。


(あの小林さんが自然に笑ってる……!)


〝楽しそうに談笑〟という非常にレアな小林さんを見ることができて胸の中がざわざわうるさくて困る。


私は、それ以上小林さんを視界に入れないように慌てて前を向いた。


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