雪国ラプソディー
「大丈夫か?」
その声がしたのは、一生懸命まつげの内側へハンカチを当てているときだった。
一番会いたいのに、今は一番会いたくない人。
「小林さん!?」
柔らかい革張りのソファの右隣が、ぎゅうっという音と共に沈みこむ。
どうして、ここに。
「浅見って本当は泣き上戸? 結構飲んだだろ」
「飲んでないです……」
首を横に振ると、隣からため息が漏れた。
「ワインがぶ飲みしてたくせに。悪酔いするぞ」
「だって美味しくて……」
「あのなあ」
呆れた声を出して、小林さんは鼻をすする私にティッシュを手渡してくれた。
「……ありがとう、ございます」
チーンと鼻をかんでいる間も、小林さんは何も言わずに隣にいてくれる。それどころか、気付けば私の両肩が暖かくなっていて。
「ん……?」